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IB認定校 横浜国際高校の「異なることをリスペクトし合う」グローバル教育

2019年10月07日

学習風景1

新たな人材像を踏まえた教育を考えるとき、注目され始めているキーワードに「国際バカロレア(IB)」がある。グローバル化が進み、複雑化する社会に対応した人材を育む国際的な教育プログラムである。IBのディプロマプログラム(DP)では、世界で認められる大学入学資格が取得できる。

神奈川県立横浜国際高等学校(以下、横浜国際)は、2014年度から2018年度まで5年間SGH指定校となり、2019年2月にIBのDP認定校となった。夏休み明けの9月、同校の授業を見学し、桜田京子校長にSGHやIBの取組みについて聞いた。

国際色豊かな授業風景

横浜国際は単位制の専門高校で、国際科本体とIBコースがある。言語系、文化系、国際関係系の専門科目が充実しており、本体では第2外国語が6言語あり、言語や国際社会に関する授業も多いという。訪問した日には、アラビア語の「言語文化研究」の授業で、アラビアのお菓子の調理実習が行われていた。

アラビア語での調理実習後、皆で試食(本体)
アラビア語での調理実習後、皆で試食(本体)

生徒が主体的に授業を進める「英語による数学の授業」

見学したのはIBコース(高1年次)の「数学(集合)」の授業だが、使用している言語はすべて英語だった。先生からの説明はもちろん、生徒からの質問も、先生からの回答もすべて英語だ。

数学の授業(IBコース)。生徒たちはグループごとに分かれている
数学の授業(IBコース)。生徒たちはグループごとに分かれている

先生が一方的に解説をして授業を仕切るのではなく、ある箇所では生徒が進める授業シーンを見ることができた。まずは先生から課題となる集合の解説があるのだが、それを受けて練習問題を解く時間が設けられ、その後は生徒の代表が中心になって答え合わせをしていく。先生は、ところどころアドバイスをするものの、授業を進行していくのは生徒自身だ。

数学の授業(IBコース)。生徒が授業を進めている
数学の授業(IBコース)。生徒が授業を進めている

スピーチコンテスト(本体)

横浜国際の専門科目には2年次、3年次を対象とした「スピーチ アンド ディベート」があるが、その科目をとった生徒たちが参加する「English Speech Contest」のリハーサルも行われていた。「本県のスピーチコンテストで入賞する生徒もいる」(桜田校長)という。

本番さながらの状態で生徒がスピーチし、それをネイティブの先生らがチェックしていく。先生方は、トータル時間や、姿勢、間の取り方、イントネーション、ジェスチャー、さらに髪型までも明るくアドバイスする。とても実践的な内容に、さすが入賞者を出す学校なのだと感じた。

コンテスト当日では準優勝を射とめた静流さん
コンテスト当日では準優勝を射とめた静流さん

IBコース1年次生たちの声

横浜国際に国際バカロレアコースができて初年度の生徒となったのは、今の高校1年生25名だ。彼らがなぜ、IBにチャレンジしようと考えたのか?学校生活をどう感じているのか?将来の夢は何なのか?荘介さん、芽唯さん、瞳さんの3人に聞いた。

IBコースの(左から)芽唯さん、荘介さん、瞳さん
IBコースの(左から)芽唯さん、荘介さん、瞳さん

--横浜国際の国際バカロレアコースを選んだ理由は何ですか。

荘介さん:公立なのにIBコースがあり、高い可能性を感じたことがひとつ。また、いろいろと自由度が高そうだと感じたため、横浜国際を選びました。

芽唯さん:本当に何になりたいかを考えたときに、国際協力の仕事に就きたいと思い、英語を学びながら国際的なことに触れることができる学校を選びました。また、さまざまなバックグラウンドをもった人たちと一緒に勉強することで、たくさんの刺激を受けることができると考え選択しました。

瞳さん:自分には行動力や考える力が足りないと感じていたので、IBコースがある本校を志願しました。暗記型ではなく、答えがない議題でも、みんなで真剣に話し合うIBの授業を受けたいと思ったことも理由のひとつです。

--実際に入学してみていかがでしたか。

荘介さん:浴衣で学校に来る日や、ハロウィンイベントを生徒が中心となり実施するなど、自由度の高い点が魅力だと感じています。自分は帰国生ですが、ニューヨークの現地校と同じように、先生ともフランクに接することができるのも好きなところです。

芽唯さん:いろいろな環境で育ってきた生徒が集まっているからなのか、“人があたたかい”ところが魅力です。また、空気を読む文化がないので、よい意味でストレートに何でも言い合え、悩みがあれば相談できる仲間がいることは幸せだと思います。

瞳さん:人の意見に合わせなくてはいけないという風潮がなく、それぞれ違う意見でも「私はこうだけれど、あなたそうなのね」と認め合えるので、自分を出しやすいところが魅力だと思います。

--将来の夢は何ですか。

荘介さん:データサイエンスを活用した経営コンサルタントを目指しています。

芽唯さん:世界の貧困で困っている地域などに国際協力できる人になりたいと考えています。

瞳さん:ダンサーか医者かで迷っていましたが、この学校に入ってIBコースで学ぶことで、医者になろうと決めました。

桜田校長が考える横浜国際の強み

桜田京子校長は、2014年度に横浜国際がSGHに指定されたタイミングで教頭として赴任し、SGHを軌道にのせたあと、IBコースの設置も担当し、新しい教育プログラムの実施を推進してきた。その桜田校長に、教育理念からIBやSGHの取組みまで、横浜国際の特長を聞いた。

神奈川県立横浜国際高校の桜田京子校長
神奈川県立横浜国際高校の桜田京子校長

--横浜国際の教育理念から教えてください。

2019年2月21日に国際バカロレア認定校になりましたが、以前から「グローバル人材の素養を育てること」を目標として掲げてきました。「世界市民として自立し、将来、日本社会や国際社会におけるリーダーとして活躍する人材となるような生徒を育成する」が私たちの教育理念です。

教育方針は、IBの「10の学習者像」を踏まえた方針に表現を変更しましたが、基本的な概念はそれまでとほとんど同じです。「10の学習者像」のうち、毎月1つの学習者像を選んで、電光掲示板や廊下、教室等に掲示して、学校全体で意識するように心掛けています。

IBの「10の学習者像」
  探究する人
  知識のある人
  考える人
  コミュニケーションができる人
  信念をもつ人
  心を開く人
  思いやりのある人
  挑戦する人
  バランスのとれた人
  振り返りができる人

IBの「10の学習者像」から毎月ひとつの学習者像を選び教室等に掲示し、学校全体で意識するように心掛けている
IBの「10の学習者像」から毎月ひとつの学習者像を選び教室等に掲示し、
学校全体で意識するように心掛けている

IBコースでの取組み

--IBコース設置の目的や1期生を迎えるまでのご苦労をお聞かせください。

2015年12月に、神奈川県教育委員会は、「個性を伸ばし能力・専門性を高める高校教育の推進」を目指して、本校を「国際バカロレア認定推進校」とすることを発表しました。本校はもともと、第2外国語を学校指定履修科目とするなどの特色をもつ高校ですが、新たにIBコースを設置することで、さらに教育の質を高めることになると注目を集めることとなりました。

2016年度から本格的に準備を進めて、2019年2月に国際バカロレア機構から認定を受けましたが、認定前にIBコースの生徒募集をして入試を行うので、どれくらいの生徒が集まってくれるのか、正直不安でした。そこで、IBとは何かをお知らせする説明会を行ったり、その魅力を伝えるための体験授業などを実施しました。また、IBコースを第1志望、本体の国際科を第2志望にできるといった入試制度上の工夫も行いました。

無事、1期生となる2019年度入学生を25名迎えることができたときには、嬉しかったですね。まだ認定を受けていない状況下で受検してくれた1期生を誇りに思っています。

--IBコースの特徴を教えてください。

IBコースは、学びの過程が本体と少し異なります。多くの授業では、生徒自らがマイパソコンで調べ、それをもとにディスカッションをしてプレゼンテーションを行います。さらに、論文を書く機会も多く、質・量ともに高い水準のものが求められます。生徒たちもそれを覚悟して入学してくれました。

--IBコースで他校と異なる点についてお聞かせください。

バイリンガルの生徒や理系の生徒にも配慮したカリキュラムを提供していることです。

IBコースの授業風景
IBコースの授業風景

SGHとしての取組み

--2014年度から2018年度までの5年間、SGHの指定を受けていらっしゃいましたが、そのときの取組みと現在について教えてください。

SGHとしては、1年次で講演を聞いたり文献を読んだりして、研究テーマを設定。2年次では日本語の論文をA4版で20枚、3年次では英語の論文をA4版で5枚以上作成し、プレゼンテーションをしてきました。多くの生徒が、自分の課題研究のテーマを基に大学進学を考えて、2018年度の卒業生では16名が海外の大学へ進学しました。その人数は今後も確実に増加すると思います。

SGHとしての大テーマは「日本の強みを海外に発信する」で、サブテーマは大きな割合でSDGsに関わっていました。SGH指定は終了しましたが、PTAが「YIS教育援助費」を設けてくださり、これまでと同様にSDGs等に関係する講演会などを開催できています。

東京外国語大学との高大連携の取組み

--2010年に東京外国語大学との高大連携事業の協定を結ばれましたが、どのような取組みをされていますか。

東京外国語大学の教授から定期的に講義を受けたり、本校の生徒向けに大学でキャンパスツアーをしていただいたりしています。本校で身に付けた外国語の力を、東京外国語大学でさらに伸ばそうと志願する生徒も多くいます。

卒業後の進路の特徴

--卒業生の進路について教えてください。

ネームバリューで進学先を選ぶよりも、今後学びたいことを優先して進学先を考える生徒が多いですね。たとえば、本校3年間の課題研究を英語で論文にまとめ、プレゼンテーションすることで推薦入試に挑戦する生徒もいます。

また、英語を生かした進路を選ぶ生徒も多いです。英語の授業の質が高いので、「大学受験用に英語を勉強する必要がなかった」という嬉しい声も聞いています。英語や第2外国語の能力を高めて、さまざまな外部検定試験を受験し、それを武器にしている生徒も多くいます。

--海外の大学に進学する卒業生も多いとお聞きしました。

そうですね。海外の大学に進学する、あるいは国内の大学へ進学したあとで海外の大学へ留学する生徒も多いです。そこで、海外大学進学のための説明会を、アメリカ大使館の方に来ていただいたりして行っています。

人にはそれぞれ個性があり、意見が「異なる」ことは普通

--生徒さんたちにはどのように成長してほしいと考えていらっしゃいますか。

世の中は日々確実に変化していますが、その変化に対応するには、学び続ける必要があります。本校の生徒には、「外国語の力を付けるのは生徒のミッションである」と話しており、生徒も学び続ける大切さをよく理解して努力しています。また、本校では、「考えること」「振り返ること」を大切にしています。

--生徒さんから、異なる意見も堂々と言えるという声がありました。

本校の特色として、生徒も教員もお互いの個性を認め合い、リスペクトしていることがあげられます。生徒の中には帰国子女や留学生もいますし、保護者が外国人の場合もあります。異なるバックグラウンドをもつことは異質と思われることがありますが、本校では人にはそれぞれ個性があり、意見が「異なる」ことは普通です。どこに着地点を見出すかを考えること、それを実践できることが大切ですし、それが身に付いている本校の生徒たちは、将来、世界平和にも貢献するのではないかと考えています。

神奈川県立横浜国際高校
神奈川県立横浜国際高校

--本日はありがとうございました。

堂々と発言したりプレゼンテーションしたりする生徒たちの姿が印象的だった横浜国際。生徒も先生も異口同音に唱える「異なることをリスペクトし合う」ことが、生徒たちの自己肯定感を育んできた結果なのではないかと感じた。2019年度には新たにIBコースという選択肢も加え、進化した同校の今後に注目したい。

(協力:中萬学院)

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