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CG’s EYE

急ピッチに進む教育改革Vol.4

No.003 2015年10月30日

大学入試の現状

文部科学省は10月20日に「平成27年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」を公表しました。そこで今回の「CGS’EYE」は、2015年度大学入試を振り返るとともに、進行する大学改革と大学入試改革を特集します。  今年の大学入学者数は昨年より9千名あまり多い、61万7,509名でした。このうち入学者選抜を経て入学した60万8,078名の状況をまとめたのが【1】です。

グラフ1

国公立大学へは全体の21.4%にあたる13万351名、私立大学へは47万7,727名が入学しています。実質倍率は高い順に公立大学2.97倍、私立大学2.74倍、国立大学2.68倍となっています。選抜方法別に見ると、私立大学では推薦・AO入試での入学者が24万1,691名と、全体の50.6%を占めています。学力試験を経て入学した生徒と、推薦・AO入試で学力試験を受けなかった生徒との入学後の学力差はこれまでも問題視されており、進行中の大学改革・入試改革でも重要なテーマとなっています。ちなみに短期大学では推薦・AO入試での合格者が全体の82.1%を占め、また募集人員の6万5,003名に満たない6万483名の入学にとどまっています。

【2】は短期大学入学者も含めた大学等入学の状況と、大学入試センター試験受験状況をまとめたものです。2015年度の大学入試センター試験には691大学・161短期大学が参加、志願者は全体で約56万名、受験者は約53万名でした。志願した現役生は45万5,392万名で、卒業生の約4割、大学等入学者の約8割に相当します。

グラフ2

(注)

  1. 大学等は大学学部(通信除く)と短期大学本科
  2. 高等学校等は高校(全日・定時・通信)、中等教育学校、特別支援学校
  3. ※大学等入学志願者数は高校(全日・定時・通信)、中等教育学校卒業生の志願者合計
  4. 過年度生全体のセンター試験志願・受験者数は高等学校等卒業者以外も含まれるので参考値です

受験科目数別にみると、最も多いのが7科目受験者の29万1,447名で、全体の54.9%に上ります。次いで3科目受験者の10万7,546名で、全体の20.3%です。受験者の4人に3人が、このいずれかの受験科目での受験です。

グラフ3

※英語・国語・生物基礎は100点満点に換算

【3】は受験者数の多かった上位10科目の状況です。標準偏差は受験者の得点のばらつきを示す数値で、大きければ大きいほど得点差がついたことになります。理数科目と英語が、やはり差のつきやすい科目です。英語は習い始めからの積み重ねがモノを言う教科ですし、数学も中学生時代に習う単元とつながっています。当たり前のこととではありますが、あらためて中学生時代の着実な積み重ねの大切さを確認したいところです。

【4】は大学等進学率の推移をまとめたものです。18歳人口に占める大学・短期大学への今年の進学率は56.5%でした。30年前は37.6%、50%台に載ったのは2005年以降と最近のことです。また現役で進学する割合も、年々高くなっています。

グラフ4

※大学等入学者は過年度生含む

以前は浪人を前提に高校生活を送るスタイルも決して珍しくはありませんでしたが、今は部活動などと学業のバランスを取りながら、現役で大学進学を目指す高校生が主流となっています。受験勉強も一斉授業のスタイルから、生徒それぞれの生活時間を生かすことのできる映像型授業スタイルが増えているのも、そういったニーズのあらわれと言えます。

大学改革と大学入試改革

それでは大学改革と入試改革についてみていきましょう。現在それはまさに進行中であり、情報は都度微妙に変化している点はご了承ください。
大学入試センター試験に代わり「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」が現中1生から導入されることは、ご存知のことと思います。これは大学での教育内容や教育方法の見直しとあわせた入学者選抜の見直しの中で進行しています。大学入試の変化と、大学自体の変化をあわせてみていくことが、今回の改革を理解する上では重要です。【5】はその全体像をまとめたものです。この全体像の中から特に「学力の3要素」と「3ポリシー」を確認していきます。

グラフ5

※【評価方法の例】

  1. 大学入学希望者学力評価テストの結果
  2. 自らの考えに基づき論を立てて記述する形式の評価
  3. 調査書
  4. 活動報告書(個人の多様な活動・ボランティア・・等)
  5. 各種大会や顕彰等の記録資格・検定試験結果
  6. 推薦書等
  7. エッセイ、大学入学希望理由書、学修計画書
  8. 面接、ディベート、集団討論、プレゼンテーション
  9. その他

21世紀を力強く生きるために必要な学力。それを再整理したのが「学力の3要素」です。①の「知識・技能」②の「思考力・判断力・表現力」は見慣れた言葉です。適性検査や高校入試問題で測られる学力です。③は初めて見る文かもしれません。そこでこの文を2つに分解してみます。一つは「主体性を持って学ぶ」。これは「学ぶ意欲」と置き換えられます。そしてもう一つは「多様な人々と協働する」。「協働」とは「同じ目的のために,協力して働くこと(大辞林)」です。自分と価値観や考え方が異なったり、生まれ育った文化が異なったりする外国の人々と協力して何かを成し遂げるということです。これはまさに「コミュニケーション力」。つまり③は「意欲とコミュニケーション力」とこれまでも聞き慣れた言葉に言い換えられます。

大学入試で測られる「学力の3要素」は、このように公立中高一貫校適性検査や神奈川県公立高校入試で求められる力と変わるものではありません。そして新しい大学入試の姿も、現在の神奈川県公立高校入試に置き換えるとイメージしやすいでしょう。受験生は全員「自己PR書」(評価の対象にはなりません)を事前に提出し面接を受けます。これは「学ぶ意欲」を測るものです。新しい大学入試でも右の【評価方法の例】が示されています。また、高校はその特色を踏まえ調査書、学力検査、面接の比率を変えたり「特色検査」を実施することができますが、同様に大学入試でも「大学入学希望者学力評価テスト」と個別に実施する入試によって、それぞれの大学が求める学生を選考するわけです。

推薦・AO入試による入学者の学力が低いという問題を解決する方法として、いったん一般入試・推薦入試・AO入試の枠組みを廃止し、それぞれの大学が求める生徒像にあわせて上記のような選抜を行おうというのが、入学者選抜変更の方針です。「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」は、各大学が選択できる選択肢の一つとして導入されるわけです。また、同時に発表された「高等学校基礎学力テスト(仮)」は、高校生がしっかりと日々の学習に取り組むことを促すとともに、選抜資料への活用も視野に導入されます。

その選考方法や求める学生像を示したものを「アドミッションポリシー」と言います。そして、入学した学生にどんな力を身につけさせるのかを示すのが「カリキュラムポリシー」、卒業に値する「学士力」を身につけたかどうかを測る基準を示すのが「ディプロマポリシー」です。その3つのポリシー、「3ポリシー」とは、入学から学修、そして卒業まで一貫した方針を打ち出すことで、大学(学部)の特徴を明確にすることを目的にした、いわば方針書です。改革会議では、その法令化を求めています。すでに3ポリシーを策定し公表している大学も多くあります。

大学は小・中・高と続く学びのゴールであるのと同時に、社会への入口です。大学での学びを知ると、社会と社会で求められている力を知ることができます。それは高校選びにも生かされるはずです。中学生時代に大学を知ることは、進路選択や高校受験のモチベーションアップにもつながる重要な機会となるはずです。

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