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CG’s EYE

急ピッチに進む教育改革Vol.5

No.004 2015年11月30日

GOAL2020とCEFR(セファール)

2020年は東京オリンピック・パラリンピック開催でけでなく、新学習指導要領の完全実施や新・大学入試、そして英語教育改革など、戦後最大級の教育改革がこの年を目指し急ピッチに進行中です。今回は英語教育改革を最新情報とあわせてみていきましょう。

英語教育改革は2つの柱で進行しています。一つは「読む・聞く・話す・書く」の4技能重視、もう一つは到達目標の明示です。文部科学省が2015年6月5日に公表した「生徒の英語力向上推進プラン」では、

  1. 国の目標を踏まえた都道府県ごとの目標設定・公表を要請
  2. 「英語教育実施状況調査」に基づく都道府県別の生徒の英語力の結果の公表
  3. 中学校での英語4技能を測定する「全国的な学力調査」の実施
  4. 入学者選抜における民間の資格・検定試験の活用促進

が示されました。(1.)の到達目標は「GOAL2020」と呼ばれ、2015年度中に公表したいとしています。自治体ごとの目標となっているのは、学校の設置者が県・市等であるからです。そして(2.)や(3.)のように、到達状況を可視化していくわけです。

その目標の目安に最近使われるようになったのがCEFR(セファール)です。CEFR(セファール)は「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠」で、英語力を下から順にA1~C2までの6段階に分けて示します。そして(4.)にある、英検など民間の試験団体の級やスコアをこのCEFR(セファール)と対照させたのが【1】です。英語の4技能すべてを高校入試や大学入試で測ることはできていません。そこでこれらの資格・検定を活用していこうというわけです。すでに大学入試ではその動きが活発化しています。

CEFRとおもな民間資格・検定試験対照表

ではその目標はどの程度のものなのでしょう。現行学習指導要領下での目標は2014年6月に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」に示され、2017年度末までの達成目標です。もう一つは新学習指導要領下での目標があり、後者のほうがより高く設定されています。それらをまとめたのが【2】です。2013年12月に文部科学省が公表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では以下のように示されています。

【2】中・高校生の英語力到達目標(CEFR)

CEFR目標 現行学習指導要領
(2017年度までに達成)
新学習指導要領
(2020年度小・中完全実施)
高校卒業段階 A2~B1:50% B1~B2
中学校卒業段階 A1:40% A1~A2

※%は対象学年のうち、その達成の占める割合。2014年閣議決定「第2期教育振興基本計画」より

CEFR(セファール)はまだ広く認知されていませんから、英検に置き換えたほうががイメージはしやすいでしょう。現行学習指導要領下の2017年度までに高校生は英検準2級~2級、新学習指導要領下では準2級~1級を目標としています。また新学習指導要領下の中学生は英検3級~準2級が目標となります。CEFR(セファール)で1段階引き上げられる目標達成に向け、英語教育改革では、その実現の一方策として2018年度から小5・小6で英語を教科化していきます。

【3】は平成26年度の高校3年生英語力調査結果で、現状の英語力を調べたものです。高校3年生の7~8割がどの項目でもCEFRのA1レベルにとどまり、特に「話すこと(スピーキング)」と「書くこと(ライティング)」が課題となっています。報告書では、改善の方向性として「生徒の興味・関心が高い話題や、時事問題や社会的な話題などについて『発表・討論・交渉』などを行う言語活動を豊富に体験」させることが挙げられています。そして目標から大きく遠ざかっている現状を受け、冒頭の「生徒の英語力向上推進プラン」が示され、目標達成に向けてさらに「推進」していこうとしているわけです。

平成26年度英語力調査(高校3年生)結果

英検も「スピーキング」「ライティング」重視へ

4技能重視と現状の課題を受け、日本人に最も親しまれまた活用されてきた英検も変化しています。英検協会は10月30日に、2016年度第1回検定から4級5級での「スピーキングテスト」導入を公表しました。さらに来年度第1回検定から「ライティングテスト」が2級に導入され、準2級、3級まで順次拡大されていきます。特に多くの小中学生が初めて受験する5級からスピーキングテストが行われることは、注目に値します。

英検協会のもう一つ注目すべき動きは、上智大学と共同開発した「TEAP」です。2014年度から実施されている「TEAP」は大学入試を想定した4技能を測るテストで、結果はスコアとバンド(A2、B1、B2)で示されます。2016年度の大学入試では21大学が採用、2017年度には早稲田大学や筑波大学が導入を決定するなど、さらに拡大していくと思われます。具体的な活用方法の例として、立教大学全学部の一般入試・グローバル方式では、TEAPスコア226点以上(CEFR_B1以上)であれば、英語以外の2教科で受験ができます。そして同大学ではCEFR_B1を基準に、GTEC CBT 1000点、TOEIC & TOEIC SW 790点、TOEFL iBT57点、英検準1級以上などを取得していれば英語以外の2教科での受験が可能です。ちなみにB1レベルの英検は2級なのですが、現時点ではライティングテストが含まれる級が準1級からのため、B2レベルの準1級となっています。

受験生にとっては、複数回受験できるこれらの民間試験で一定の成績をおさめれば、入試で他教科に専念することができるメリットがあります。CEFR(セファール)B1以上が、中・高校生の英語学習目標として重要度を増しているわけです。

CEFR(セファール)B1以上の英語力のために

高校卒業段階でCEFR(セファール)B1以上。それが国の推進する英語教育改革でも大学入試でも、子どもたちが目指す英語力の到達目標です。では教育現場の実際はどうなのでしょう。自治体が独自に推進する取り組み例を2つご紹介します。

横浜市の取り組み例「第2期横浜市教育振興基本計画」(2014年12月)より

  • 市立中学校において 生徒の40%が英検3級(CEFR_A1)以上
  • 全日制市立高校において 生徒の50%が英検準1級(CEFR_B2)以上

を2018年度までに達成

大和市の取り組み例「11月定例記者会見」(2015年11月)より

  • 市立小学校において全校で英語の短時間授業を導入、3年後に現在の2倍の授業時間

※「市の調べでは、同要領を見据え、小学校全校で短時間授業を活用した英語教育を先行して実施する自治体は、県内市町村では初めてです」(定例記者会見資料より)

「GOAL2020」では都道府県ごとに生徒の英語力の達成目標を設定し、国と目標を共有することになりますが、どのような目標が示されるのか、注目したいところです。
次号では、成果を上げている学校での取り組みや、公立中学生が取り組むべき英語学習についてみていきましょう。

付録:CEFRレベルについて(文部科学省資料より)

熟練した言語使用者
C2 聞いたり読んだりした、ほぼ全てのものを容易に理解することができる。いろいろな話し言葉や書き言葉から得られた情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。自然に、流ちょうかつ正確に自己表現ができる。
C1 いろいろな種類の高度な内容のかなり長い文章を理解して、含意を把握できる。言葉を探しているという印象を与えずに、流ちょうにまた自然に自己表現ができる。社会生活を営むため、また学問上や職業上の目的で、言葉を柔軟かつ効果的に用いることができる。複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作ることができる。
自立した言語使用者
B2 自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な点を理解できる。母語話者とはお互いに緊張しないで普通にやり取りができるくらい流ちょうかつ自然である。幅広い話題について、明確で詳細な文章を作ることができる。
B1 仕事、学校、娯楽などでふだん出合うような身近な話題について、標準的な話し方であれば、主要な点を理解できる。その言葉が話されている地域にいるときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。身近な話題や個人的に関心のある話題について、筋の通った簡単な文章を作ることができる。
基礎段階の言語使用者
A2 ごく基本的な個人情報や家族情報、買い物、地元の地理、仕事など、直接的関係がある領域に関しては、文やよく使われる表現が理解できる。簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄について、単純に直接的な情報交換に応じることができる。
A1 具体的な欲求を満足させるため、よく使われる日常的表現と基本的な言い回しは理解し、用いることができる。自分や他人を紹介することができも、住んでいるところや、誰と知り合いであるか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりすることができる。もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助けが得られるならば、簡単なやり取りをすることができる。

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