CG’s EYE
急ピッチに進む教育改革Vol.6
No.005 2015年12月25日
前回CG’EYEでは英語教育改革を取り上げました。主なポイントを振り返ると
- 「読む・書く・聞く・話す」4技能を重視
- 「CEFR(セファール)」という国際標準規格を使い、中学卒業段階ではA1~A2、高校卒業段階ではB1~B2を新学習指導要領上での到達目標にする
- 現状では高校生の英語力はA1レベルにとどまり特に「話す」「書く」に課題がある
- 大学入試での4技能評価のため、TEAPなど民間試験を活用
- 英検は2016年度第1回から5級4級でスピーキングテストを導入
このように大きな転換期を迎えている日本の英語教育。今回は学校現場の取り組みと中萬学院グループの取り組みをご紹介します。
公立中高一貫校の英語教育
中萬学院グループでは2009年開校の県立相模原中等、県立平塚中等、2012年開校の横浜市立南高附属中、2014年開校の川崎市立川崎高附属中を毎年取材してきました。その中で特に注目したのが英語教育の先進性です。6カ年教育のメリットを生かし、まさに「使える英語力」を育成しています。分かりやすく外部に到達目標を公開しているのが南附属中です。
横浜市立南高校附属中学校 英語指導 (学校HPより該当部分抜粋)
- 英検準2級 3年2月に生徒の80%以上が取得
- 英語集中講座(5時間×3日間)を3年間全員受講
- 英語科リスニングマラソン
- イングリッシュキャンプ(3日間)を2年生で実施
英検準2級はCEFR_A2レベルで、2020年からの新学習指導要領下で中学生の到達目標になるレベルです。現状は高校3年生の8割がA2の下、A1レベルにとどまっていることは、前回触れたとおりです。南附属中では、中1の間に検定教科書を5回繰り返し学習します。1周目は聞く、2周目は音読するというように、まずは英語に親しむところから始めていきます。そして夏休みには少人数グループでの英語集中講座。外国人講師によるオールイングリッシュの授業で最終日には全員が英語スピーチを行います。2年生ではイングリッシュキャンプ、3年生ではカナダ研修旅行が行われ、英語を活用する非日常の機会も用意されます。オールイングリッシュの授業は、中3になっても生徒たちのきれいな発音が教室に響き渡り、むだのないテンポの良い授業が展開されています。
平塚中等教育では、昨年11月に教育課程研究発表大会が開催されました。188ページにわたる研究紀要のほか、70ページにおよぶ「年間英語活動」資料も用意され、6年間の教育成果の手応えが感じられます。英語科では「20年後の社会で活躍する生徒を育てる」「大学入試で一定の成果を収める」の二兎を追う目標を掲げ、学校だけでなく外部の力も活用して目指したそうです。平塚中等では1年生が3日間集中のイングリッシュサマーワークショップ、2年生が2泊3日のイングリッシュキャンプ、3・4年生がサイエンスイマージョンプログラム、4・5年生が英国語学研修旅行、4~6年生がエンパワーメントプログラムと、外部機関を活用した魅力的なプログラムが用意されています。2015年12月22日に開催されたエンパワーメントプログラムには、平塚中等の生徒だけでなく湘南白百合、横浜平沼高校等の生徒71名が参加しました。生徒は5~6名の小グループに分かれ、海外大学生や大学院生リードのもと、提示されたテーマに基づきグループディスカッションや創造的プロジェクトを行い、最終日にプレゼンテーションを行いました。
学校内では、文化祭でのレシテーション大会、英語弁論大会のほか、単語力強化のために、大相撲を模した2学年間対抗の単語コンぺを定期的に実施するなど、先生方もさまざまな工夫を凝らして、英語4技能の向上を図っています
3つの学習場面で英語力を
南附属中、平塚中等2校の英語教育をご紹介しましたが、相模原中等、川崎附属中でも同様の取り組みが行われています。成果を上げている4校の共通項を3つの学習場面に分けて整理してみます。【1】は中学生が英語学習を行う場面を整理したものです。
英語学習の基盤は言うまでもなく学校と家庭学習です。県内公立中高一貫校の英語授業は毎日あり、時間数も公立中学より多く確保されています。1クラスを2つに分けた少人数クラス、習熟度別クラス編成や長期休暇を利用した補習など、きめ細かに指導する体制がとられています。家庭学習も含めた日常生活上での「量」の確保が、英語力向上の土台となっています。
そして非日常。各校さまざまにイベントを行っています。スピーチコンテストや英語弁論大会などは、日常生活でのモベーションアップや英語学習量の確保に有効です。またイングリッシュキャンプやイマージョンスクールなど、名称は各校さまざまですが、共通しているのは「英語を使って何かをする」。最近耳にすることが多くなったのが「イマージョン教育」です。「イマージョン(immersion)」は「浸すこと」。英語を使って他教科を学習したりするものです。外国人講師の指導の下、集中してオールイングリッシュの世界に浸る経験は、その後の英語学習にも大きな影響を与えます。
CG中萬学院の英語指導も
英語力は授業・家庭学習そして非日常のイベントの3つの場面で高めていけます。CG中萬学院に通い高校受験を目指す中学生にも、高校受験のための英語学習にとどまらない「読む・聞く・話す・書く」4技能を高める指導に昨年から本格的に取り組み始めました。
日常生活での英語学習時間を確保するために導入したのが「English Express」です。タブレット端末にアプリをダウンロードした後はネット環境がなくてもいつでもどこでもネイティブの発音で英語学習ができます。中萬学院グループが開発したアプリですから、もちろん高校入試にも対応したものです。CG中萬学院生全員が英語自主学習時間を増やすべく、このアプリを使用し、早くも成果を上げ始めています。【2】【3】【4】は導入から5カ月後に、220名の生徒に行ったアンケート調査の結果です。注目したいのは「スピーキング力」。ネイティブと会話することだけが、スピーキング力向上の手立てではありません。ネイティブのきれいな発音を真似て繰り返し話すことでも、その力はついていくことを生徒は実感しています。
非日常のイベントでは、これまで小学生を対象にした英語スピーチコンテストを毎年行っていました。2015年度は中学生を対象に2泊3日の「イングリッシュイマージョンスクール」を夏に開催、当初定員120名を拡大する人気となりました。1クラス10名程度のグループに分かれ、外国人講師指導のもと異文化を学んだりプレゼンテーションスキルを学んだりしました。生徒は最終日のプレゼンに向け、自分の伝えたい単語を調べて文章を作り、外国人講師に添削してもらい、練習を重ねます。「インプットのためのインプット」ではなく、「アウトプットのためのインプット」を通し、辞書の活用も学べたようです。
中学卒業段階でCEFR_A2レベルに到達する。新学習指導要領を待たずに、CG中萬学院生は新たな時代の英語学習に取り組み始めていることをお伝えし、今号の結びとします。