CG’s EYE
県内公立中高一貫校最新情報
No.011 2016年06月30日
現在県内には4校の公立中高一貫校があります。そして来年には5校目となる、横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校が開校します。そこで今回のCG's EYEは、県内公立中高一貫校のトピックスをお届けします。
小学6年生の4.7%、3,639名が志願
2016年度、県内公立中高一貫校4校に志願したのは3,639名、県内公立小学6年生の4.7%にあたります(学校基本調査に基づく児童数)。志願率は昨年が4.8%、一昨年が5.2%とわずかに減少しています。受検意思を持ち適性検査対策を積んできた受検生の戦いとなっていること、私立中学受験ほどではないにせよ、塾代も一定程度必要になることがその背景にあります。
【1】県内公立中高一貫校受検状況
※受検者:志願後から取り消しや欠席をせず適性検査・グループ活動を受検した人数。取消し・欠席者数は( )に表記しました。グループ活動受検後の取り消しは非公表のため、実質倍率として扱います
★:南高校附属中は1次選考で男女各70名を選考し、2次選考で男女あわせて20名を適性検査得点上位者から決定します。志願倍率は便宜上80名定員でそれぞれ算出しています
【1】は県立中等教育が開校した2009年からの受検状況をまとめたものです。一般的に公立中高一貫校受検は女子の人気が高く神奈川県もその傾向にありますが、県立中等2校においては、男女の差が縮まっていることが見て取れます。男女80名ずつの募集ですから、女子の受検者にとっては勇気のわく傾向です。一方、南附属は定員の20名分が男女あわせて、川崎附属は定員120名すべてが男女あわせての募集です。2校の合格者はどの年も女子が多いのが分かります。今年は、南附属では20名分のうち女子が16名、川崎附属では定員の66%にあたる79名を女子が占めます。特に南附属に関しては、適性検査実施日が2月3日であることが影響しています。女子校のいわゆる難関上位校の入試日と重ならないため、魅力ある併願先となっているわけです。他校と比べ受検取り消し(欠席)者が多いのも、私学との併願者が多いことのあらわれです。
公立中高一貫校第一志望者の戦い
県立中等教育開校から7年が経ち、中学受験の姿も変化が現れています。各校の質の高い教育実践を見て、公立中高一貫校を第一志望に中学受験学習を始めるご家庭が増えてきています。また併願先として選択肢の一つに検討するご家庭も増えています。【2】は毎年啓明館卒塾生保護者に行っているアンケート結果ですが、「公立中高一貫校受検を考えた」と回答した割合は45%、アンケートをとり始めた2010年の倍以上となっています。
【2】公立中高一貫校受検を考えましたか?
啓明館2016年卒塾生保護者アンケート結果より
そして、第一志望の受検が増えたと言える背景に、繰上げ合格者数の減少があります。公立中高一貫校の場合は定員分しか合格者を発表しません。他の私学へ進学する場合は合格を辞退し、その分が繰上げ合格となります。繰上げ合格者数は非公表なので中萬学院グループの推定ですが、私学併願者の多い相模原、南附属の繰上げ合格者数は減少傾向にあるようです。
ところで、公立中高一貫校受検は中学、高校、大学受験とは異質な受検です。受検できるのは他県も含め1校のみですからチャンスは1回です。しかも高倍率です。保護者の方は「合格」を願う一方、適性検査対策学習そのものに価値を見出しています。「知っているかどうか」ではなく「知っていることをどう活用するか」が問われる適性検査。また「算数のセンス」も重要です。対策学習を通して身につけていくこれらの力は、2013年度から始まった県内公立高校新入試や高大接続改革下で進行する新しい大学入試で求められる力と共通しています。適性検査型入試を導入する私立中学も出てきました。公立中高一貫校志願者の取り込みを狙ってのものですが、適性検査型の出題が今後の学力トレンドを象徴しているからでもあります。
保護者の方は、公立中高一貫校受検をそれらの力を高め伸ばす機会として、また目標に向けて自らを律し努力し成長する機会として、とらえています。その保護者の方の姿勢があって初めて、子どもたちは臆することなく合格に向けて努力できるのでしょう。
2017年、いよいよ県内5校目となる横浜サイエンスフロンティア高校附属中学が開校します。県立が2校、横浜市立が2校、川崎市立が1校、計5校の公立中高一貫校が県内で募集を行います。中萬学院グループの公立中高一貫校専用情報誌「CGニュースプラス」では、各校の訪問記を掲載しています。中萬学院グループホームページ「神奈川の公立中高一貫校まるわかり」でご覧いただけます。あわせてぜひお読みください。
県立中等は公立トップ校に肩を並べる大学合格実績
昨年の1期生に続き真価が問われた今春の大学入試でも、相模原中等、平塚中等の2校は高い合格実績を上げました。【3】は県立中等2校の2年間の合格実績をまとめたものです。
【3】県立中等教育2校の大学合格実績(1期生・2期生計)
学校(母体高校) | 相模原中等(相模大野) | 平塚中等(大原) |
---|---|---|
1期生・2期生倍率(※1) | 12.5倍 | 5.63倍 |
卒業生累計 | 306名 | 299名 |
国公立大計(※2) | 117名(38.2%) | 85名(28.4%) |
早慶上智(※3) | 148名(48.4%) | 88名(29.4%) |
明青立法中東理(※4) | 314名(102.6%) | 282名(94.3%) |
私立大計 | 892名(291.5%) | 951名(318.1%) |
(※1)2009年度と2010年度の受検者数合計と2年分の募集定員で算出
(※2)防衛大等文部科学省所管外国立大学校含む
(※3)早稲田・慶應義塾・上智大
(※4)明治・青山学院・立教・法政・中央・東京理科大
相模原は「大野高校のよき伝統を引き継ぐ」(初代校長田中先生)、平塚は「全く新しい学校をつくる」(初代校長望月先生)方針のもと2校は開校しました。母体校が地域トップ校で交通の利便性も良い相模原中等には、初年度2,583名が受検する一方、母体校が地域3番手校で駅からも離れている平塚中等の受検者は1,020名と、1,500名以上の差がありました。それが今年、2校の受検者数の差は263名まで縮まっています。2校を見て比べて、自分に合った学校にチャレンジするという受検生が増えていくかもしれませし、ぜひ見比べることをお勧めします。同じ県立中等ですが、2校それぞれの個性が育っているからです。
2校は共通の設置目的のもと、「表現コミュニケーション力」「科学・論理的思考力」「社会生活実践力」の3つの力の育成・伸長を重視した教科指導や、6年間かけてそれぞれがテーマを見つけ研究する「かながわ次世代教養」の設置など、6カ年一貫教育のメリットを生かした教育が展開されています。5年次に国公立大理系進学に必要な数学Ⅲを修了するなどの先取りカリキュラムは進路選択の幅を可能にし、英語教育は高い進学実績を生み出すとともに、コミュニケーションツールとしての英語力養成が行われています。新学習指導要領で重視されることになる「アクティブラーニング」の取り組みは早期から行われ、成果を生んでいます。それらの確かな学力養成を基盤にしたうえで「かながわ次世代教養」などで自分の学びたいこと・進みたい道をしっかりと見つけることで、主体的な大学・学部選択を可能にしています。
平塚中等は第三代校長に落合先生が着任、副校長には横浜国大附属横浜から加藤先生が着任し、平塚中等第2ステージをけん引されていきます。相模原中等は今年も坂本先生が第三代校長としてけん引されます。副校長にはかつて相模大野高校、相模原中等で教べんをとられていた鈴木先生が着任されました。
横浜市立2校の動きを注視
6月に横浜サイエンスフロンティア高校附属中学と南高校附属中学の募集要項が発表されました。
【4】横浜市立2校の募集要項トピックス
【4】は主なトピックスをまとめたものです。注目の横浜サイエンスフロンティア高校附属中学の募集要項では、これまで「男女おおむね同数」と表現されていた募集定員が「男女各40名」とされたこと、適性検査の出題のねらいが明示されたこと、選考資料はこれまでの発表どおりに適性検査2本と調査書で行われることが明確になりました。適性検査が何点満点か、調査書の扱い、選考資料の配分などは11月の志願者説明会で公表されていきます。
開校に向けての動きは、これまでの県内4校とは違う動きです。開校準備室長が次期校長として積極的に広報を行うということがありません。開校準備室長は高校教育課の課長が兼務しています。附属中学は、2009年に開校し日本を代表する理数科高校となった横浜サイエンスフロンティア高校の、さらなる発展を期し開校します。新しい学校を創造するというよりその充実が目的といえます。新たな学校の創造を目的とした4校との違いが、開校1年を切っての動きの違いに現れています。
今回の募集要項発表では、南高校附属中学の適性検査変更のほうがむしろ話題となりました。これまで3本行われていた適性検査が2本になりました。出題のねらいから1と3が1本化されたと見てよいでしょう。実は南附属中では準備室スタート当初は適性検査2本で発表されていました。それが6月の募集要項で3本に増えた経緯があります。今回の2本化は、当初の姿に戻ったという見方もできます。受検生にとっては負担軽減につながる今回の変更。選考資料に占める適性検査の割合など、今後の公表が待たれます。
「何か日本一を作らないと失敗する」。開校前から南附属中をけん引され、今年3月に退任された高橋正尚前校長先生が、今年5月に開催した講演会でお話されたことです。全国の公立中高一貫校で成功しているのは母体校がトップ校の場合が多い中、南高校が母体校の附属中学が成功するための戦略の一つが「英語で全国トップになる」。中3生の英検準2級取得率を75%に掲げ、見事達成しています。中1では検定教科書を5回繰り返す「5ラウンド制」を導入し、注目を集めています。高橋先生に代わり第二代校長に就任された磯部先生と、清田副校長先生のリーダーシップのもと、南附属中の新しい歴史がスタートしました。
川崎附属中1期生は来春高校進学
2014年度開校の川崎市立川崎高校附属中学は、3学年がそろいました。1人1台タブレットを持ち、授業や自習に活用する先進的な教育に取り組んでいます。適性検査問題は先生と生徒との対話形式で構成され、他校と比べいわゆる算数や図形の力を問う設問が少ないのが特徴です。その出題に関して「少なくとも3年間は変えません」とこれまでの取材で和泉田校長先生は仰っていました。4年目となる来春の適性検査の出題のねらいにも変化はないので、川崎スタイルは継承されていくようです。
1期生はいよいよ高校へ進学します。南附属中のときもそうでしたが、1期生が川崎高校に進学するかどうかが注目されます。まさに「中高一貫校」の成否はそこにあるといえます。そして高校の1学級募集がいよいよスタートします。調査書と学力検査と面接の比率をこれまでと変更し、川崎市立唯一の学力重視型「3:5:2」を採用しました。また、川崎市教育委員会は、川崎市立商業に普通科を新設し「川崎市立幸高校」と改称します。これらが1学級募集に与える影響に注目したいところです。ちなみに先行する南高校の1学級募集は今年定員割れし、横浜市会でも議題に上りました。高校の1学級募集という課題の中、県立中等教育に引けをとらない中高一貫校となることを願っています。
中萬学院グループでは7月10日(日)に横浜サイエンスフロンティア高校附属中学対策説明会、9月11日(日)に校長先生、副校長先生による南高校附属中学校学校説明会を予定しています。引き続き公立中高一貫校進学を目指すご家庭を中萬学院グループはサポートしていきます。