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CG’s EYE

急ピッチに進む教育改革Vol.7

No.014 2016年10月01日

2016年3月に公表された高大接続システム改革会議「最終報告」を踏まえた高大接続改革の進捗状況を、文部科学省は8月31日に公表しました。今回のCG’s EYEでは、その中から特に「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」での英語を取り上げます。新入試制度下で大学受験を迎える現中学2年生以降の「今」の英語学習に大きな影響を与えるからです。

スピーキング含めた4技能評価の方法が具体化

2020年度から大学入試センター試験に代わり導入される「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」。そこでは「聞く・読む・書く・話す」英語4技能を評価することが最終報告で示されました。今回の進捗状況では、具体的な方法が「たたき台」として2案示されています。【案1】は民間の資格・検定試験だけで4技能を測り、センター試験に代わるテストは実施しないというもの、【案2】はスピーキングとライティングを民間資格・検定試験で測り、リーディングとリスニングはセンター試験に代わるテスト(マーク式)で測るというものです(図1参照)。進捗状況では、将来的には案1の実施を目指しつつ、当面は案2をもとに実施することが示されています。

【図1】英語4技能評価の実施形態( たたき台)【案2】

文部科学省資料をもとに中萬学院作成

民間の資格・検定試験といえばまず思い浮かぶのが英検ですね。英検では従来の級の合否に加え、スコア尺度を導入し、技能別のスコアを大学入試等で活用できるように整備されました(2016年度から英検2級にライティングが加わり、4技能の資格検定になっています)。「CSE2.0」と呼ばれるこのスコアが、スピーキング力、ライティング力を測る資料として活用されていきます。ちなみに、英検協会と上智大学が共同開発し、すでに大学入試で活用が始まった「TEAP」も4技能をスコアとバンドで示すものです。「CSE2.0」も「TEAP」スコアも「CEFR」を基準にしています。「CEFR」は日本の英語教育の到達目標の指標となっています。文部科学省が2013年12月に公表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では中学校卒業段階で「CEFR_A1~A2程度」、高校卒業段階で「CEFR_B1~B2程度」が示されています。

現在すでに大学入試で活用されているTEAPスコアでは「CEFR_B1」以上を基準にする大学が主流です。英検では2級以上の英語力です。

【図2】CEFR と英検とTEAP

英検協会をもとに中萬学院作成

スピーキング力向上の学習は必須

このように新しい大学入試では、スピーキング力も含めた英語4技能が問われることが具体的になってきました。現中学2年生以降がその選抜を受けます。一方、中学2年生や1年生はどれだけスピーキングをトレーニングしているでしょう。中学生にとって重要な定期テスト、高校入試でスピーキング力が測られることはまだありません。英検も準2級まではスピーキングテストがありません。中学生は、スピーキング力を高める切実な環境にはおかれていないわけです。

保護者の方の中には、仕事で英語を日常的に使っている方もいらっしゃいます。多くは英語を使わなければならない切実な環境ゆえに、ご自身で英語力を高めたことと思います。一方、中学生はその切実な環境におかれていませんから、スピーキング力を高める英語学習のハードルは相当高いと言わざるを得ません。毎日一定時間スピーキングトレーニングを行っている中学生はごく少数、というのが実際だと思います。

CG中萬学院が昨年から導入した長文読解トレーニング「English Express」と今年から導入したスピーキングトレーニングシステム「My ET」は、ICTを活用し日常的にリスニング力スピーキング力向上のトレーニングができるものです。部活動にも勤しむ普通の公立中学生が、限られた時間を有効に使い英語4技能を高め、将来の大学入試でも力強く道を開いてほしいと願っています。

県内公立中学生と高校生の進路

最後に、今春卒業した公立中学生と高校生の進路結果について8月公表の「学校基本調査(速報)」をもとに振り返りましょう。

今春公立中学校を卒業したのは昨年より653名多い7万397名でした。その進路は【グラフ1】のとおりです。全日制公立高校には卒業生全体の61.8%、4万3,528名が進学しました。また県内・県外の全日制私立高校へは卒業生全体の28.0%、1万9,731名が進学、率も実数も昨年を若干上回りました。

【グラフ1】公立中学校卒業後の進路状況

新制度以前の前期・後期選抜では公立高校受験を2回チャレンジできたこともあり、私立高校志願者は3万名台でした。新制度以降は5万3千名以上が志願するようになっています。また、毎年10月に実施される進路希望調査では、全日制公立高校を志望する受験生は全体の8割に上りますが、実際に進学できるのは6割というのが現実です。新制度下では公立高校と私立高校それぞれで「行きたい」と思える第一志望校を定めることが重要と言えます。

過去最高の4万名が大学等に進学

次に高校3年生の進路状況です。今年は昨年より721名多い6万5,311名が卒業し、そのうち61.5%にあたる4万157名が大学等に進学しました。進学率は今年も東京・京都に次いで全国3位でした。また、大学等進学者が4万名台となったのは初めてです。

県内高校生の大学等進学状況をまとめたのが【グラフ2】です。県内高校卒業生数が最も多かったのが1992年で、11万2,004名でした。この頃は入学志願者から進学者を引いた人数、ほぼ浪人生数と見てよい人数は3万名を超える厳しい時代でした。浪人はいわば当たり前の時代だったわけです。ところが現在その差はわずか4千名程度と、現役での進学が主流となっています。背景には少子化による大学全入時代、つまり選ばなければだれもが大学等に進学できるということが挙げられます。しかし、国公立や早慶などは決して易しくなったわけではありません。難関大を目指す高校生は、高校3年間でその学力を身につけていくことが求められていると言えます。

【グラフ2】県内高校生の卒業後進路

新時代の大学入試の対策は、中学・高校入試対策の延長線上にあります。しかし、英語4技能、とりわけスピーキング力向上だけは、中学生一人ひとりが自主的に学習環境を整えなければ、身につけることができません。新時代の大学入試をにらみ、現中学2年生1年生はスピーキング力向上トレーニングに、1日も早く取り組んでください。

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