CG’s EYE
県内公立中高一貫校最新情報
No.023 2017年07月01日
2017年4月、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校附属中学校(YSFJH)が開校し、神奈川県内の公立中高一貫校は5校となりました。そこで今回のCG's EYEでは、県内公立中高一貫校の最新情報を各校の取材を踏まえお届けします。
3期生も大健闘した県立中等教育2校
【編集員】編集長は5月から6月にかけて県内5校の公立中高一貫校を取材してきました。
【編集長】それぞれの個性がそれぞれに魅力的だった。開校年度の古い順にみていこう。
【編集員】まずは2009年開校の県立中等教育、相模原と平塚ですね。3期生の合格実績も素晴らしい結果でした。
【編集長】2校とも3年連続で現役東大合格者を輩出している。それぞれのトピックを挙げると、平塚は国公立大医学部へ6名が現役合格し、横浜市大医学部には4名が現役合格した。相模原は今年も東大に6名が現役合格、うち1名が推薦合格だった。
【編集員】東大推薦の定員は全部で100名程度ですが、今年は71名しか合格していません。
【編集長】県立中等教育の特色の一つが「かながわ次世代教養」。前期課程ではICTスキルや英語コミュニケーションスキル、プレゼンテーションスキルを伸ばし、後期課程では各自が興味関心を持った分野の探究活動を行い論文作成を行う。課題を発見し解決する探究活動はこれからの学びでも重要だと、先生方も指摘している。
【編集員】今年5月に文部科学省が公表した「高大接続改革の進捗状況」を読むと、一般入試では「調査書や志願者本人の記載する資料等の積極的な活用を促す」とされ、資料については「生徒の探究的な学習の成果等に関する資料やその面談など」の付記があります。
【編集長】高校で何を学び、そして大学で何を学びたいのか、生徒一人ひとりの主体的な学びがますます問われるようになっていく。「かながわ次世代教養」しかり、英語4技能指導、アクティブ・ラーニングなど、次期学習指導要領の目玉と言える教育を2009年開校時から実践している2校のアドバンテージは大きいと思う。
【編集員】設置計画では、相模原は「科学・論理的思考力」、平塚は「表現コミュニケーション力」の育成を特に重視するというように、理系、文系の特徴づけをしていたそうですが、今もその違いはあるのですか。
【編集長】理系文系の違いはないね。2校とも国公立志望の生徒が多いし、6年間の集大成としてセンター試験5教科を受けようという目標も同じだ。もちろん学校行事はそれぞれに特色がある。例えば平塚の英語学習プログラムは、他の公立中高一貫校も参考にする魅力あるプログラムを組んでいる。将来の進路希望によって2校を選ぶというのではなく、「肌に合うかどうか」だろうね。相模原カラー、平塚カラーが育っているからね。
【編集員】今年の教員異動で相模原中等の先生が平塚中等の教頭先生に、平塚中等の教頭先生が相模原中等の副校長先生に就きましたね。
【編集長】2校の校長先生、副校長先生は、お互いが個性を伸ばしながら県立中等教育学校2校がともに発展していくことが重要だと話していらした。そして平塚中等は「セカンドステージ」、相模原中等は「新たな伝統」と表現は違うけれど、これまで作ってきた教育の仕組みをあらためて見直し、改善すべきところは改善していくという力強い言葉も聞かれた。来年は10期生が入学する区切りの年でもある。2校がこれからも発展していくことを確信する取材だったよ。
6学年すべてそろった南高校附属中
【編集員】次に2012年開校の横浜市立南高校附属中学校です。今年6期生が入学して全学年がそろいました。
【編集長】中等教育との違いは、高校から1学級分の募集があることだ。一般的に、高校からの入学生を「外進生」、中学から持ち上がる生徒を「内進生」と呼ぶが、南高校では「高入生」「中入生」という表現をしている。高校からの生徒も大事にする姿勢のあらわれだね。実は当初は中等教育学校で公表されたのだけれど、南高校がなくなることへの反対が強く、附属中学校になった経緯がある。
附属中1期生の進級にあわせ高校も改革・改善が現在進行形で進んでいる。1期生が高校に入学した平成27年度に国からSGH(スーパーグローバルハイスクール)にも指定された。研究開発構想は「国際都市横浜発、次世代ビジネスリーダーの育成」で5年間の指定を受けている。そして1期生が高校3年になった今年から中学・高校ともに3期制に変更になった。大学受験指導には3期制が良いとの判断だそうだ。
【編集員】附属中の初代校長高橋正尚先生の著書「学校改革請負人 」が6月に発売されました。南高校附属中をどうやって作っていったか、総合学習の時間「EGG」や英語の「5ラウンド制」など南高校附属中の特色もよく分かりました。
【編集長】おこがましくもコラムで紹介していただき、まさに汗顔の至りだ。高橋先生が推進してきた学校づくりは、第2代校長先生、副校長先生にしっかりと引き継がれていると思う。1期生の健闘と後輩たちのさらなる頑張りに期待したいね。
川崎高校附属中は1期生が高校に進学
【編集員】次に2014年開校の川崎市立川崎高校附属中学校です。今年1期生が高校に進学しました。
【編集長】母体校の川崎高校は創立100年を超える伝統校、附属中学開校の夏に新校舎が竣工した。ICT環境が整い、室内プール・ホールを完備した県内屈指の立派な校舎だね。1学年120名川崎市内のみの募集、男女別の定員を設定していないのが特徴だ。男女比は女子のほうが多い。「体験・探究」「ICT活用」「英語国際理解」の3つを教育活動の柱にすえ、生徒一人1台タブレットPCを持ち、授業や自主学習で活用している。先生方も電子黒板を巧みに使い、まさにICT教育の先駆者となっている。今年から公益財団法人パナソニック教育財団の「特別研究指定校」にも指定された。英語は毎日授業があり1クラスを2つに分けた少人数授業。イングリッシュキャンプやイングリッシュチャレンジなど、「使える英語」習得を目指している。公表はしていないが、英検準2級以上の取得率はきわめて高い。他の教科では、グループワークや学びあい・教えあいを重視した授業展開だ。適性検査も対話形式の作問が特徴。川崎附属中の特徴があらわれているね。1期生がどういう進路決定をするのか、とても楽しみだ。
横浜サイエンスフロンティア高校附属中が開校
【編集員】最後に今年開校した横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校附属中です。1学年男女40名ずつ、横浜市内のみの募集です。初年度の志願倍率は男子が11.5倍、女子が5.88倍でした。
【編集長】母体校は今や日本を代表する理数科専門高校。「サイエンス」というと理科というイメージがあるけれど、社会科学・人文科学も視野に入れた広い意味の科学だ。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)だけでなくSGH(スーパーグローバルハイスクール)のダブル指定を受けていることからも、その取り組み姿勢が分かるね。
【編集員】私も取材に同行し、その施設の素晴らしさに感激しました。企業や有識者で構成される科学技術顧問のアドバイスやサポートもあります。
【編集長】県立中等教育開校と同じ2009年に高校が開校した。神奈川県にとって2009年は歴史的な年だね。その開校当初から、中学からの学びを通して有能な人材を育てたいという構想はあったそうだ。そして附属中学開校に伴い「サイエンスエリートの育成」という目標が新たに掲げられた。附属中学校では中高一貫校が行うカリキュラムの先取りは行わず、「DEEP学習」をベースにしている。「考察討議」「実験」「体験」「発表」の頭文字だ。そして高校からの入学者との「融合」で、より深い学び実現しようというわけだ。
【編集員】中学1年生がテレビのインタビューにしっかり受け答えしていたのが印象的でした。8月11日の放送が楽しみです。
【編集長】5校それぞれに個性と魅力を感じることができる。今は公立中高一貫校を目指して中学受験の学習を始めるご家庭も増えてきた。先ごろ公表された「大学入学共通テスト(仮)」のモデル問題を見ると、適性検査そっくりだった。適性検査突破に向けた学習は将来の高校・大学受験にも役立つと言える。高倍率であるからこそ、適性検査対策学習そのものに価値を見出すことが大切だね。
学校取材記事も掲載「まるわかり公立中高一貫校」