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CG’s EYE

県内公立高校入試問題と高校最新情報

No.033 2018年05月01日

今回は県内公立高校入試問題と高校最新情報についてみていきましょう。

記号選択問題は増えても難度上昇

今春の公立高校入試は、記号選択問題にマークシート式が導入されて2回目の入試でした。合格者平均点の推移をまとめたのが【1】です。2013年度から「思考力・判断力・表現力」をより問うべく、入試問題も大きく変化した神奈川県公立高校入試。2012年度までは6割を超えていた合格者平均点も、国語以外は5割前後で推移してきました。2017年度はマークシート式導入初年度とあって、前年度より軒並み得点は上がりましたが、2018年度は英語以外すべての教科で前年を下回る結果となっています。

【1】神奈川県公立高校全日制合格者学力検査平均点

年度 英語 数学 国語 理科 社会
2018年度 56.1 56.0 65.6 45.3 41.8
2017年度 51.9 63.5 73.1 46.9 54.5
2016年度 43.0 51.7 64.7 46.5 52.0
2015年度 51.8 52.6 64.4 37.4 50.2
2014年度 59.6 51.7 60.8 38.6 49.5
2013年度 54.8 65.5 67.8 66.4 51.1
2012年度(※) 68.8 67.0 71.0 62.6 64.2

(※)2012年度は50点満点を100点満点に換算

【2】学力検査配点比較

【2】は出題形式別の配点推移をまとめたものです。2018年度は記号選択式がさらに増えたにも関わらず、合格者平均点が下がっていることが分かります。難度が上昇したのは、完答や複数解答形式、解答に至るまでの思考プロセスや作業の複雑化などが要因として挙げられます。10点以上平均点が下がった社会の問題を見ると、記号選択は26問から32問に増え、記述式は3問から1問に減っています。その中で正答率の低かった1つを取り上げてみましょう。

表中のAのできごと以降のものを、次の1~6の中から全て選び出し、それらを古いものから順に並べたときに3番目にあたるものの番号を答えなさい。


1.西南戦争の勃発

2.内閣制度の発足

3.戊辰戦争(戊辰の乱)の勃発

4.版籍奉還の実施

5.国会期成同盟の結成

6.大日本帝国憲法の発布


(表中Aのできごと)「岩倉具視を大使とする欧米への使節団が日本を出発した」

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正解:2

昨年度までは、5つのできごとの中から特定の時期のものを「3つ選び」、古い順に並べるという出題がよく見られました。数が指定されるより「全て」のほうが知識の確かさが要求されます。ちなみに県教委は社会科の実施結果について「基礎的な知識を問う問題の正答率は高かったが、より深い知識と理解の上に、思考・判断した結果を選択する問題や比較的近い時代のできごとを因果関係によって並べ替える問題の正答率は低かった」とコメントしています。いわゆる「知識再生型」ではなく「知識活用型」の出題にしっかりと対応できる力が求められています。この力は2020年度からの大学入学共通テスト試行問題でも同様に問われている力であることは、以前のCG’s EYE(No.030)でも触れたところです。

県内高校最新情報~学力向上進学重点校本指定ほか

神奈川県では2016年度から県立高校改革が進行中です。1期4年、3期にわたる実施計画では、再編統合による20~30校程度の削減が進行していきます。また「学力向上進学重点校」や「理数教育推進校」などを指定し「生徒の個性や優れた能力を伸ばす教育」に取り組むことを重点目標の一つに掲げています。改革は5つの地域に分けて実施されています。【3】がその地域と主な指定校です。「学力向上進学重点校」は、昨年湘南と横浜翠嵐が先行指定を受け、先だって新たに厚木と柏陽が指定を受けました。17校がエントリーし、その中から10校程度を指定する予定でしたが、本指定を受けたのは4校にとどまっています。今後新たにエントリー校を募集し、要件を満たした高校を順次指定していくそうです。

【3】県立高校改革地域分けと主な指定校

  横浜北東・川崎 横浜南西 横須賀三浦・湘南 中・県西 県央・相模原
学力向上進学重点校 横浜翠嵐 柏陽 湘南 厚木  
理数教育推進校 多摩 希望ヶ丘 横須賀 平塚江南 相模原
プログラミング教育
研究推進校
住吉 横浜緑ヶ丘 茅ヶ崎西浜 西湘 相模原総合
グローバル教育
研究推進校
神奈川総合 横浜平沼 横須賀明光
鎌倉
小田原 大和西
国際バカロレア
認定推進校
  横浜国際      

これらの県指定の高校のほか、文部科学省が指定するのがスーパーサイエンスハイスクール(SSH)とスーパーグローバルハイスクール(SGH)です。SSHは「将来の国際的な科学技術系人材を育成することを目指し、理数系教育に重点を置いた研究開発を行う」もので、2002年度から始まっています。申請のあった高校から毎年数校がSSHに指定されます。指定期間は5年間で、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が活動推進に必要な支援を実施します。
またSGHは「グローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、もって、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的」に2014年度からスタートしました。SSHと同様、活動期間は5年間です。
SSH、SGHとして活動期間中の県内高校は【4】のとおりです。県立希望ヶ丘高校は先ごろ2018年度SSH指定の内定を受けました。また、10年以上の歴史を持つSSH、過去に指定を受けた県内高校は県立柏陽高校、県立西湘高校、県立神奈川総合産業高校、慶應義塾高校です。

【4】県内SSH・SGH指定校(2018年度活動)

SSH指定校 市立横浜サイエンスフロンティア高等学校/県立横須賀高等学校/聖光学院中学校・高等学校/県立希望ヶ丘高等学校
SGH指定校 公文国際学園中等部・高等部/県立横浜国際高等学校/市立横浜サイエンスフロンティア高等学校/市立南高等学校/法政大学国際高等学校
SGHアソシエイト校 神奈川学園中学・高等学校/湘南学園中学校高等学校/横浜女学院高等学校

国際バカロレア(IB)教育の動き

横浜国際高校は本年度中に県内公立校初の国際バカロレア認定を受け、「国際バカロレアコース(仮)」の募集を開始する予定です。一般募集は20名程度。日本語と英語によるデュアル・ランゲージ・ディプロマ・プログラム(DLDP)を導入し、大学入学資格「IBディプロマ資格」と高校卒業資格の取得を目指します。「国際バカロレアコース(仮)」志願者は国際科本科を第2希望として志願することができますが、入学後のコース変更はできません。ちなみに高校卒業資格と「IBディプロマ資格」が取れる県内高校は、今春開校した法政大学国際高校(旧:法政大学女子高校)と横浜国際高校の2校です。

2013年に閣議決定された「日本再生戦略」の具体目標の一つとして、2018年までに国際バカロレア認定校等を200校程度まで大幅に増やすことが示されました。そして昨年「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議」が発足し、5月に中間取りまとめが公表されています。SGHとの連携や大学入学者選抜での活用促進等、IB教育を推進していくことが示されています。

国際バカロレアはたんに海外大学入学資格取得という点だけでなく、新学習指導要領との「親和性」からも今後注目が高まるものと思われます。次号で詳しく見ていきましょう。

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