2月号以来やっと出番がきました。よろしくお願いします。
CG’s EYE
国際バカロレアの動き
No.034 2018年06月01日
今回は日本国内でも少しずつ広がりを見せる国際バカロレアについて見ていきます。
最新入試情報、学校情報が届く6月
今月は市立南高校・附属中学をはじめ県内公立中高一貫校の取材がたくさん入っているから、よろしく頼むね。
県内私立中学45校が参加する「神奈川私学の集い」も6月2日からスタートします。今年は栄光学園が初参加というトピックもあります。6月8日放送のtvk「CHUMAN進学ナビステーション」で第1回の様子をご紹介する予定です。7月13日放送では1期生が素晴らしい大学合格実績をあげた南高校・附属中学校をご紹介する予定です。
宣伝ありがとう。まもなく来春の入試要項が公表されていくね。公立中高一貫校では横浜市立2校の適性検査がどうなるか注目だし、公立高校の選考基準では、進学重点校や横浜国際高校に新設されるIBコースが注目だね。
という編集長のフリを受け、今回のCG‘sEYEは国際バカロレアについてです。編集長の質問に答えるかたちで国際バカロレアを紹介したいと思います。
国際バカロレアの基本情報から
では早速。国際バカロレアの誕生から教えて。
1960年代にスイスで開発された教育プログラムです。たとえば外交官や国際機関職員などの家庭の子どもたちが、赴任先のインターナショナルスクールから母国の大学の入学資格を得られる、世界標準の教育プログラムとして発達してきました。
「バカロレア」の意味は?
フランス語で中等教育の修了資格証明と大学入学資格証明を指す言葉です。スイスの公用語の一つがフランス語なので、「国際バカロレア」という名称になったようです。国際バカロレアは「IB」が通称なので、この後はIBと言います。
IBの特徴は?
「IB MISSION STATEMENT」には次のように記されています。
「多様な文化の理解と尊くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とし重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築ています」
そして年齢に応じた4つのプログラムで構成され、このうち大学入学資格(IBディプロマ資格)を付与するのがDPです。
【1】IBのプログラム
対象 | 名称 | 導入校数(日本国内) |
---|---|---|
3~12歳 | PYP | 1,509(22) |
11~16歳 | MYP | 1,398(14) |
16歳~19歳 | CP(職業教育) | 136(0) |
16歳~19歳 | DP(大学入学資格) | 3,209(33) |
(文部科学省HPより)
今年共学化して法政大学女子から名称変更した法政大学国際のIBコースや来春スタートする横浜国際国際バカロレアコース(仮)はDPを導入するけれど、日本ではどのくらい設置されているの?
2017年6月現在、33校設置されているのですが、高校の卒業資格も得られるいわゆる「一条校」では20校です。ほかはインターナショナルスクールですね。
どのくらいの生徒がIBを取得しているのだろう?
2015年では、日本国内で日本人がIBを受験したのが258名、取得したのが234名、取得率90.7%という結果でした。2006年ではそれぞれ149名、81名ですから、取得者数は約3倍に増えています。規模はまだ小さいですが、取得者数は確実に増えています。
IBを大学入試に活用している大学はどのくらいあるの?
国内では54大学の推薦・AO入試で実施されています。IB資格者のみを対象にする場合と、IB資格者以外も対象にする場合があります。2013年の教育再生実行会議第四次提言では「大学は、入学者選抜において国際バカロレア資格及びその成績の積極的な活用を図る」と記されています。同じ2013年に閣議決定された「日本再興戦略-JAPANisBACK」の「グローバル化に対応した教育をけん引する学校群の形成」の具体的なアクションとして「スーパーグローバルハイスクール」の指定と「国際バカロレア認定校等の大幅な増加」が挙げられ、2018年までに200校という数値も示されました。
IBで何をどう学ぶか
IBのDPプログラムの学びは?
DPの授業は原則英語、フランス語またはスペイン語で行う必要があるのですが、国際バカロレア機構と文部科学省の協議で、一部科目を日本語で実施できる「日本語DP」が導入されました。法政大学国際も横浜国際もDP科目の一部を日本語で学習します。DPカリキュラムは6つのグループから1科目ずつを、そして3つのコア(必修要件)を履修します。1科目7点満点、3つの必修要件3点満点(CASは点数対象外)の計45点満点で、24点以上の取得でDP資格が得られます。これとは別に、高校卒業資格に必要な教科・科目を履修するのですが、文部科学省では特例措置を設けました。①DP科目の単位を高校卒業単位数へ最大36単位まで算入できる②英語・数学・理科、総合的な学習の時間をDP科目の履修に変えることができる③国語以外の教科を英語で実施することができる学校と生徒の負担を軽減する措置です。
【2】DPカリキュラム
グループ名 | 科目例 |
---|---|
1 言語と文学 (母語) |
言語A:文学、言語A:言語と文学、文学と演劇 |
2 言語習得 (外国語) |
言語B:初級語学、古典語学 |
3 個人と社会 | ビジネス、経済、地理、グローバル政治、心理学、環境システム社会、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教 |
4 理科 | 生物、化学、物理、デザインテクノロジー、環境システムと社会、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学 |
5 数学 | 数学スタディーズ、数学SL、数学HL、数学FHL |
6 芸術 | 音楽、美術、演劇、ダンス、フィルム、文学と演劇 |
コア | 課題論文(EE) 日本語の場合は8千字 知の理論(TOK) 「知識の本質」について考える 創造性・活動・奉仕(CAS) 体験的な学習 |
授業のスタイルにも特徴があるのかな?
講義式ではなく、生徒が主体となったいわゆるアクティブラーニングが中心のようです。「IBの学習者像」では、10の人物像が示されています。
そして、DPの中心となっているのがコアの「知の理論(TOK)」です。次のように説明されています。
知識の本質について考え、知識に関する主張を分析し、知識の構築に関する問いを探究する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるように促す。最低100時間の学習。(文部科学省HPより)
確かに先生が教え込むものではないね。人物像しかり、TOKしかり、国立教育政策研究所の「21世紀型能力」や新学習指導要領で示されているものとの親和性が高いことがわかるね。
2017年6月に公表された「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議 中間取りまとめ」では、次のような将来像が記述されています。
IBの「全人教育」を通じた主体的学びを重視し、幼稚園、小学校、中学校、高校を通じた国際バカロレアプログラム(PYP、MYP、DP)を推進し、今後の初等中等教育の好事例の形成を目指す。
海外の大学入学資格を得るための施策をこえて、日本の初等中等教育全般にプログラムを活用していく考えもあるわけだね。2030年以降の学習指導要領はIB色がより鮮明になっていくかもしれないね。