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2014年8月公開号
vol.30 特集:国際都市川崎をリードする人材を育てる
2014年4月開校 川崎市立川崎高等学校附属中学校訪問記
夏休み明けの供用開始を目指し工事が進む新校舎。グラウンドに建設された仮校舎には、無線LANをはじめ新校舎と同様の学習環境が用意されています。入学から3カ月、倍率7.1倍の激戦を勝ち抜いたI期生120名はどのような学校生活を送っているのでしょう。
何事にも積極的なI期生
「期待していた以上に生徒たちは、学習に行事に積極的に取り組んでいます。一人1台のタブレットPCも使いこなしていますね」とうれしそうに語るのは和泉田校長先生。また植村教頭先生は「おだやかで人なつっこい子たちです。そして自分たちで学校を作っていくんだと、何事にも前向きです」
I期生は4月に2泊3日の自然体験教室へ。6年間ともに学ぶ仲間との連帯を強めクラスの仲間との交流を深めました。そして5月にはとどろきアリーナで中高合同の体育祭。学年縦割りの8ブロックに分かれ高校生と一緒に汗を流しました。その高校生、感心したのは、皆が元気な大きな声であいさつをしてくれることです。I期生にとっても頼りになる優しいお兄さんお姉さん的存在のようです。部活動はその高校生と合同で行われますが、中学生は18時までが活動時間。11ある部活動の中で「一番人気」はソフトテニス部だそうです。
注目の「一人1台PC」は?
川崎附属中では生徒一人ひとりが専用のPCを持ち、授業やeラーニングに活用する先進的な学習を行っています。タブレットにもなるキーボード付きのノートPCは、ペン入力や動画撮影もできる多機能PC。校内のサーバーに学習履歴が保存され、生徒も先生も確認することができます。朝と放課後に15分ずつ設けられたeラーニングでは、生徒が自主的に学習内容を決め、取り組んでいます。和泉田校長先生は「英語・数学に取り組む子が多いようですね。校内どこでもできるので、落ち着いて取り組みたい子は空き教室を使ってやっています。また授業ではグループ学習にも使いますし、先生が生徒個々の課題に応じた課題を送信して問題に取り組むこともしています。先日の理科実験ではブーメランの飛ぶ様子を動画で撮影し、それをクラスで共有して繰り返し見ながら学習を進めていました」
校内には生徒がPCで作った新聞や理科実験レポートが掲示されています。PCを活用した学習には、多くの可能性がありそうです。植村教頭先生は「PCは自宅に持ち帰ることができるので、授業と家庭学習をどう効果的に結び付けていくか、生徒の様子を見ながら今後も研究を続けていきます」
タブレット型PCを活用した授業とICTスキル
「コラボノート」というソフトを使い、自分の意見を付せんにはるように入力。他の生徒の意見が画面で見られる。動画や写真も使えるので理科の実験観察レポートなども簡単に作れる。過去のデータも見られる。
学校説明会案内を作成して母校へ送付
2泊3日の自然体験教室の様子を新聞に
「嫌い」を作らないきめ細かな学習指導
公立中高一貫校共通の課題が、入学後の特に数学の学力差です。川崎附属の取り組みはどうでしょう。
「『嫌い』を作らないことを第一に考えてきめ細かく指導しています。英語・数学はクラスを2つに分けて15人の少人数クラス授業を基本としています。朝と放課後のeラーニングの時間を使って個別補習を行うこともあります」と和泉田校長先生。
英・数・国は週5時間授業の川崎附属中。数学は「中学数学内容+αを2年間で履修できる(教材紹介文)」中高一貫校用の「ニューマイスター」を使用し、英語ではALT(外国語指導助手)とのチームティーチングを基本に展開、「パワーポイント」を使った英語による自己紹介など、ICT活用を掲げる川崎附属中ならではの授業も行われています。また6月の英検受検者には英検対策も実施、35名の受検者全員が合格(4級・3級1次)したそうです。
総合学習「LEADタイム」
県立中等では「かながわ次世代教養」、南附属中では「EGG」と、公立中高一貫校ごとに特徴がある総合学習。川崎附属中では「LEADタイム」と呼び、定着期(中1・中2)では「農林漁業体験」、充実期(中3・高1)では「川崎文化・産業学習」、発展期(高2・高3)では「最先端技術学習」に取り組みます。
「アクアラインで1時間弱で行ける君津の農家とタイアップし、枝豆の露地栽培と校内でのプランター栽培を行います。農業を切り口に世の中を見ていく中でテーマを見つけ、掘り下げる学習を期待しています」と植村教頭先生。教室には「枝豆はなぜ幅広い世代に好かれているのか」「特産品の歴史、作る過程」など班ごとの学習テーマも掲示されています。9月の学習発表会、報告書の出来栄えが楽しみですね。
30人4学級編成のアットホームさ
男女別の募集を行わない川崎附属中、I期生120名の6割強が女子です。「やりにくさや不自然さはありません」と植村教頭先生。来年度も同様の募集です。
県内公立中高一貫校で最も少ない1クラス30名の少人数体制、授業でも先生の目がしっかり行き届いていることがうかがえます。I期生120名の、豊かな学びの6年間は始まったばかり。「ICT活用」「体験・探究」「英語・国際理解」、3つのキーワードのもと、生徒は国際都市川崎をリードする、たくましい人材へと成長していくことでしょう。
川崎市立川崎高等学校附属中学校
校長 和泉田政徳先生
本校には6年間かけてじっくり学び、自分の夢を見つけ、その実現に向けておおいに学び続けていける環境が用意されています。そして、皆さんの夢を一緒になって実現していこうとする先生方が皆さんを待っています。学習面はもちろん学校生活すべてにおいて、自分から進んで何かをしていこうという気持ちを持った子どもたちに、ぜひきてほしいと思います。皆さんの「やる気」と「根気」で、この環境を最大限生かしてください。
■新校舎の竣(しゅん)工まぢか!
夏休み明けから新校舎にて
授業開始予定です
最上階には可動屋根付プールが設置される7階建ての新校舎。
附属中学のほか、全日制高校、定時制高校が利用し、南部地域療育センターも1階に併設されます。
約500名収容の講堂。学校行事や授業等で活用されます。
「教科センター方式」を採用。専用教室、メディアスペース、教員ステーションを教科ごとに配置します。
- 体育館の屋上(5階)は全天候型のテニスコート。フットサルコートにもなります。
- グラウンドは人工芝、校舎の屋上には屋上菜園。1畳程度の菜園を4人で利用する予定です。(2015年7月完成予定)