2022年度公立高校入試概況
はじめに神奈川県全体の全日制の状況についてお伝えします。以下【1】をご覧ください。これは年度ごとに県内の公立中学校卒業生数、公立高校全日制一般募集の募集定員、応募者数の3項目について前年度との比較(増減)を棒グラフで表したものです。2022年度は卒業生数が前年よりも1,957人多く、2016年以来の増加に転じました。卒業生数が増えたことで、公立高校の募集定員も拡大されましたが、その規模はプラス800人と比較的小規模なものでした。しかし、応募者数もあまり伸びず、募集定員の拡大数と同程度の787人の増加にとどまりました。公立高校に人が集まらない公立離れが起きている理由として「私立学校学費支援制度」の認知・活用が進んでいることや大学入試に対する不安等が挙げられます。その結果、第一希望の進学先に私立高校を選ぶ受験生が増えており、今年もその傾向が続いているといえます。
2022年度の全日制公立高校の実質競争率(合格発表時の競争率)は1.20倍で昨年度の1.19倍とほぼ変わらない数字でした。しかし、高校・学科ごとの状況は一律ではなく、その詳細を見ていくと平均競争率では見えない実情がわかります。【2】は2013年度から2022年度の入試で2学級以上募集のあった全日制高校・学科の実質競争率を分布図で示したものです。2022年度、1.5倍以上・1.4倍以上・1.3倍以上の暖色で示した高倍率校・学科は27あり、全体に占める割合は17.3%でした。一方、濃い青色で示した「実質倍率が1.0倍ちょうどか定員割れ」の高校・学科は66あり、こちらは全体の42.3%を占めています。3月1日の合格発表の時点で36校・計1,521人の欠員が生じたため、昨年度(37校・計1,039人)よりも大きな規模で二次募集が行われる結果となりました。
以下【3】は2022年度入試の高倍率校(2学級以上募集のあった全日制高校・学科について)のランキングです。大学進学を重視し、かつ実績をあげている進学校を中心に毎年高倍率化する傾向が見られます。県の学力向上進学重点校や学力向上進学重点校エントリー校に指定されている高校は毎年ランキングの常連校です。
【3】2022年度高倍率校トップ10
校名 | 学科コース | 合格者数 | 実質倍率 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 横浜翠嵐★ | 普通科 | 358 | 2.07 | 1.80 |
2 | 多摩☆ | 普通科 | 280 | 1.66 | 1.63 |
3 | 横浜緑ケ丘☆ | 普通科 | 278 | 1.64 | 1.68 |
4 | 湘南台 | 普通科 | 244 | 1.63 | 1.28 |
5 | 鎌倉☆ | 普通科 | 318 | 1.51 | 1.42 |
6 | 新城 | 普通科 | 268 | 1.51 | 1.42 |
7 | 茅ケ崎北陵☆ | 普通科 | 278 | 1.50 | 1.29 |
8 | 希望ケ丘☆ | 普通科 | 359 | 1.50 | 1.38 |
9 | 横浜市立横浜サイエンスフロンティア◆ | 理数科 | 158 | 1.49 | 1.25 |
10 | 横浜平沼☆ | 普通科 | 318 | 1.49 | 1.32 |
※2学級以上募集のあった全日制高校・学科のみ
※倍率は実質競争率(合格発表時の競争率)
※★は県立の学力向上進学重点校、☆は学力向上進学重点校エントリー校。◆は横浜市指定の進学指導重点校
学力検査5教科計の合格者平均点は13.6点ダウン、理科を除く4科で前年を下回る
3月25日(金)、神奈川県教育委員会は「令和4年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」を公表しました。この発表資料をもとに、学力検査を振り返ります。【4】に学力検査合格者平均点の2013年度から2022年度までの推移をまとめました。まず、5教科合計の合格者平均点については、昨年度の301.2点から2022年度は13.6ポイントダウンしています。理科を除く4科で昨年度よりも平均点が低く、特に社会は昨年度から10.2ポイント下がっています。折れ線グラフで示した各教科合格者平均点の位置を見ると、2022年度は5教科ともかなり接近しているのが特徴です。教科間の問題難易度のばらつきが小さかったことは、県が目指す方向に沿った結果であったといえます。
各教科の実施結果の概要には、「条件を正確に読み取り考察することが必要」「知識や与えられた情報を整理して活用する」「学習した知識と与えられた資料を関連付けながら思考・判断する力を問う」といった問題では正答率が低かったとあり、出題の意図とともに受験生に求める力がよくわかります。基礎知識をきちんと身につけ、それを結びつけながら物事を考えて理解を深める、一方向だけでなく異なる視点からも考えて解決法を探してみるといった訓練を日ごろから積んでおく必要があるでしょう。「令和4年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」には教科別得点分布や設問ごとの正答率とともに各教科の出題のねらい等が掲載されていますので、ぜひ学習の参考にしてください。
英語 | 数学 | 国語 | 理科 | 社会 | 5科計 | |
2022年度 | 52.1 | 52.9 | 61.3 | 58.9 | 62.4 | 287.6 |
2021年度 | 54.6 | 58.2 | 65.7 | 50.1 | 72.6 | 301.2 |
2020年度 | 49.4 | 55.7 | 69.1 | 55.9 | 58.2 | 288.3 |
2019年度 | 49.8 | 50.3 | 59.1 | 61.3 | 42.5 | 263.0 |
2018年度 | 56.1 | 56.0 | 65.6 | 45.3 | 41.8 | 264.8 |
2017年度 | 51.9 | 63.5 | 73.1 | 46.9 | 54.5 | 289.9 |
2016年度 | 43.0 | 51.7 | 64.7 | 46.5 | 52.0 | 257.9 |
2015年度 | 51.8 | 52.6 | 64.4 | 37.4 | 50.2 | 256.4 |
2014年度 | 59.6 | 51.7 | 60.8 | 38.6 | 49.5 | 260.2 |
2013年度 | 54.8 | 65.5 | 67.8 | 66.4 | 51.1 | 305.6 |
※各教科100点満点
学力向上進学重点校と同エントリー校の特色検査「共通選択問題」採択状況
県立の学力向上進学重点校と同エントリー校では2022年度も共通問題と共通選択問題を組み合わせた統一形式による筆記型の自己表現検査(以下特色検査)が行われました。統一形式の内容は全校共通の問1・問2に加え、共通選択問題の中から学校ごとにさらに2問を選んで出題するというものです。各校の2022年度共通選択問題採択状況は【5】をご覧ください。2021年度から学力向上進学重点校エントリー校の指定を受けた横浜国際高校においても、はじめて同様の形式による特色検査が実施されました(※)。
学力向上進学重点校と同エントリー校では学力検査で受験生間の差がつきにくくなっているため、特色検査の得点差が合格・不合格に大きく影響します。難度の高い特色検査で1点でも多く獲得できるよう、受験生はしっかりと対策と訓練を積む必要があります。
【5】2022年度の特色検査「共通選択問題」採択状況
学校名 | 2022年度採択状況 | ||||
---|---|---|---|---|---|
問3 | 問4 | 問5 | 問6 | 問7 | |
湘南 | ○ | ○ | |||
川和 | ○ | ○ | |||
横浜平沼 | ○ | ○ | |||
小田原 | ○ | ○ | |||
横浜翠嵐 | ○ | ○ | |||
厚木 | ○ | ○ | |||
柏陽 | ○ | ○ | |||
横浜緑ケ丘 | ○ | ○ | |||
多摩 | ○ | ○ | |||
横須賀 | ○ | ○ | |||
光陵 | ○ | ○ | |||
鎌倉 | ○ | ○ | |||
茅ケ崎北陵 | ○ | ○ | |||
大和 | ○ | ○ | |||
相模原 | ○ | ○ | |||
横浜国際(国際科本体) | ○ | ○ | |||
希望ケ丘 | ○ | ○ | |||
平塚江南 | ○ | ○ | |||
横浜国際(IBコース) | 独自 |
※横浜国際高校国際科国際バカロレア(IB)コースの共通選択は独自問題による出題
特色検査に対応できる学力を身につけることを中学校3年間の学力到達目標に
4月、新学期がスタートしました。中学生の皆さんには特色検査に対応できる学力を身につけることを3年間の学力到達目標として日々の学習に励んでほしいと願います。中学3年間で培う学力は高校入試を突破するためだけでなく、その延長線上にある大学入試、さらには社会に出てからも必要となる力につながるからです。新しい学年での皆さんの活躍を祈っています。