2018年度神奈川県内公立高校の入学者選抜が終了しました。今回は全日制の入試について総括を行います。
2018年度公立高校入試概況
2018年度の全日制公立高校の平均競争率(実質倍率)は1.19倍でした。2013年に現在の入試制度が始まって以降、平均競争率に大きな変動はありません。ただ、2018年度は公立中学の卒業予定者数が前年から900人程度減る中、公立高校の出願者数が前年マイナス1100人と子どもの減少数よりも多かったことが特徴的でした。要因は複数あると考えられますが、1つには私立専願の受験生が多かったことが挙げられます。2018年度の高校受験に臨んだ中3生は2020年に新しい制度で大学受験をする1期生となります。全容の見えない3年後の大学入試への不安感等から大学の付属校を選ぶといったケースもあったと思われます。
募集定員に満たなかった高校は18校でした。一部の高校で定員を大きく割った結果、これまでにない300名超の二次募集が行われました。
【2】は2013年度から2018年度入試の実質倍率の分布です。1.4倍以上が21校・1.1倍未満が67校と人気の二極化が顕著だった2016年度をピークに2017・2018年度は落ち着きを見せていますが、一部の高校では依然として高い競争率になりました。
【3】2018年度高倍率校(学科コース)トップ20
校名 | 学科コース | 合格者数 | 実質倍率 | 2017年度 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 横浜翠嵐★ | 普通 | 359 | 1.83 | 1.61 |
2 | 川崎市立橘 | 国際 | 39 | 1.82 | 1.87 |
3 | 上矢部 | 美術 | 39 | 1.79 | 1.33 |
4 | 横浜市立横浜商業 | スポーツマネジメント | 39 | 1.74 | 1.26 |
5 | 多摩★ | 普通 | 278 | 1.69 | 1.54 |
6 | 横浜緑ヶ丘★ | 普通 | 280 | 1.60 | 1.58 |
7 | 川崎市立川崎総合科学 | 情報工学 | 40 | 1.58 | 1.03 |
8 | 川崎市立川崎総合科学 | 建設工学 | 40 | 1.53 | 1.08 |
9 | 横浜市立YSFH☆ | 理数 | 238 | 1.52 | 1.44 |
10 | 神奈川総合 | 国際文化 | 90 | 1.49 | 1.24 |
10 | 新城 | 普通 | 268 | 1.49 | 1.71 |
12 | 横浜国際 | 国際 | 138 | 1.48 | 1.38 |
13 | 川和★ | 普通 | 319 | 1.46 | 1.53 |
14 | 相原 | 畜産科学 | 40 | 1.45 | 1.08 |
14 | 川崎市立高津 | 普通 | 278 | 1.45 | 1.17 |
16 | 大和★ | 普通 | 279 | 1.44 | 1.47 |
16 | 横浜市立戸塚 | 普通 | 279 | 1.44 | 1.35 |
16 | 光陵★ | 普通 | 287 | 1.44 | 1.33 |
19 | 神奈川総合 | 個性化 | 159 | 1.42 | 1.21 |
20 | 川崎市立橘 | スポーツ | 39 | 1.41 | 1.67 |
※★は県立の学力向上進学重点校(エントリー校含む)☆は横浜市の進学指導重点校
高倍率校のトップ20には県立の学力向上進学重点校先行指定の横浜翠嵐とエントリー校5校、横浜市指定の進学指導重点校である横浜サイエンスフロンティアが入っています。大学進学に力を入れており、かつ実績をあげている高校は毎年高倍率化する傾向が見られます。県立学力向上進学重点校のエントリー校からの本指定は県教育委員会によって2018年5月頃に行われるそうです。受験生の関心も高い進学重点校の決定は、2019年度以降の志願動向にも影響を与えると思われます。
マークシート方式2回目、出題の工夫で問題難易度は上昇
「採点誤りを防ぐ」ことを目的に2017年度の学力検査から解答用紙に導入されたマークシート方式。数字や語句を書いたり文章で記述する問題の出題数や配点が減ったことで合格者平均点の上昇につながりました。2018年度は2017年度からさらに記号選択式の出題が増えましたが、思考力・判断力の測定をマークシートでもしっかりと実現しようと選択肢等の工夫が行われたことで問題の難易度は上昇しました。それは学力検査の合格者平均点にもあらわれています。
5教科計の合格者平均点は一昨年並みの水準に
神奈川県教育委員会は3月28日(水)に「平成30年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」を公表しました。2018年度は英語を除く4教科で2017年度の合格者平均点を下回り、5教科の合計は264.8点とマークシート方式導入前の2016年度並の得点でした。受検者がもっとも苦戦したのが社会です。合格者平均点は41.8点と2017年度から約13ポイントダウンし、現制度開始以降もっとも低い得点となりました。多くの資料を読み取りながら、地理の知識と歴史の知識を組み合わせた判断を求めるような出題もあり、多面的な力が問われたことも得点が伸びなかった要因の1つと考えられます。様々な知識を結びつけながら物事を考え、さらに深く理解すること、一方向だけでなく異なる視点からも考えてみるといった訓練を日ごろから積んでおく必要があるといえます。この公表資料では学力検査各教科の出題のねらいや実施結果概要、設問ごとの正答率や合格者の教科別得点分布も掲載されていますので学習の参考にしてみてください。
神奈川県教育委員会の発表ページを見る
英語 | 数学 | 国語 | 理科 | 社会 | 5科計 | |
2018年度 | 56.1 | 56.0 | 65.6 | 45.3 | 41.8 | 264.8 |
2017年度 | 51.9 | 63.5 | 73.1 | 46.9 | 54.5 | 289.9 |
2016年度 | 43.0 | 51.7 | 64.7 | 46.5 | 52.0 | 257.9 |
2015年度 | 51.8 | 52.6 | 64.4 | 37.4 | 50.2 | 256.4 |
2014年度 | 59.6 | 51.7 | 60.8 | 38.6 | 49.5 | 260.2 |
2013年度 | 54.8 | 65.5 | 67.8 | 66.4 | 51.1 | 305.6 |
※各教科100点満点